【症状】やわらかい便や血便など・・・便の性状や症状は様々
下痢の症状は、異常のある部位によって異なります。
食べものを消化・吸収する役割のある小腸に異常があって下痢が起こる「小腸性下痢」の場合は、1回の便の量は多いけれど回数はそれほど増えない傾向があります。便の性状は様々でやや軟便のこともあれば、水っぽいこともあります。小腸に出血がある場合は、便の色が黒っぽくなってきます。小腸性下痢が長期にわたって続くときは、合併症状として体重の減少や嘔吐、脱水などが見られます。
水分吸収を行う大腸に異常があって下痢が起こる「大腸性下痢」の場合は、1回の便の量は正常か少なめの傾向があり、回数は頻回になります。便の性状は軟便で粘液が混ざっていることが多いために粘り気があります。大腸で出血がある場合には、血便が見られることもあります。大腸性下痢では、体重の減少はあまり見られません。
下痢が見られる場合に注意が必要なのは、細菌感染やウイルス感染などが原因で起こる下痢です。この場合、数日間、激しい下痢をくり返す他、嘔吐や脱水、発熱などの全身症状をともない、ときに命に関わるような重篤な症状を示すことがあります。一般的に嘔吐といった下痢以外の症状が見られない場合には、一過性(数日間で治るもの)の下痢であることが多いようです。
【原因】食べものや寄生虫、ウイルス感染、腫瘍など原因は様々
下痢を引き起こす原因には、主に次のようなものがあります。
- 食事による下痢
過食や高脂肪食を口にした場合、食餌内容を変更した場合、食物アレルギー、乳糖を分解する酵素の働きが低下または欠損している”乳糖(ラクトース)不耐性”の犬が牛乳を飲んだ場合、腐ったものや異物を拾い食いした場合などに起こります。犬の下痢の要因としてはもっとも多く見られます。 - 回虫や条虫などの寄生虫感染による下痢
回虫症、瓜実条虫症、鞭虫症、糞線虫症、鉤虫症、マンソン裂頭条虫症、ジアルジア症などの寄生虫症によって起こります。 - ウイルス感染や細菌感染による下痢
犬パルボウイルス症、犬ジステンパー感染症、コロナウイルス感染症などのウイルス感染症や、大腸菌・サルモネラ菌などの細菌感染によって起こります。 - 腸炎や膵炎、腫瘍などによる下痢
好酸球性腸炎、膵炎、胃や腸の腫瘍、悪性リンパ腫(消化器型)、IBD(炎症性腸疾患)などによって起こります。 - ストレスによる神経性下痢
引っ越しや移動などの環境変化がもたらすストレスによって起こります。
【治療】原因を特定して、それにあわせて最適な治療をおこなう
下痢の治療は、下痢を引き起こす原因を特定し、その原因に対する治療を行う必要があります。
【予防】適切な健康管理と食事管理、ワクチン接種や定期駆虫など
下痢の予防として、適切な健康管理と食事管理で、下痢を引き起こす原因そのものを予防することが大切です。愛犬が乳糖不耐性の場合には牛乳や乳製品(チーズなど)を与えないようにし、食餌内容を変更するときには少しずつ変えるようにしましょう。また、犬パルボウイルス感染症、犬ジステンパー感染症、コロナウイルス感染症などに有効なワクチンを、日頃からきちんと接種しておくことも大切です。回虫症や瓜実条虫症などの寄生虫感染症の予防には、拾い食いさせないことやノミ予防・駆虫薬の定期投与(定期駆虫)が有効となります。